「就職・転職の悩みと相談」 非正規雇用からの脱出方法は?

 このコーナーはキャリアコンサルタント上田信一郎が、多くの社会人の転職相談、商業紹介経験や大学生の就職活動支援・大学のキャリアデザイン講師、そして、自らの就職・転職失敗体験をもとにして、Q&A方式のものも含めて記事を書かせていただいているものです。

Q 相談者
 私は現在コンビニのアルバイトとして3年勤務しています。コンビニフランチャイズ店として3店経営している規模の所です。FC経営者からも信頼はされています。しかしアルバイトであるために現在30歳の年齢を迎えて将来が不安になってきました。
 高卒で正規の社員歴はなく各種のアルバイトや派遣を経験してきました。ファーストフードの飲食業、工場の製造派遣、倉庫の人材派遣などです。倉庫の人材派遣が長いと思います。20代ではそれなりに稼げたのでまずいとは思っていましたがズルズルと時間が経ってしまいました。人並みに結婚がしたいと思うようになり非正規雇用からなんとか脱出し正社員の仕事に就けないかと思っています。
 しかし正社員歴がないためにどうしたらよいかわかりません。

A 私
非正規雇用は雇用主側が求める低賃金政策です。産業の構造的な問題で政府が強い指導力で産業側、雇用側に規制をかけなければ是正されない社会問題です。
 特に人件費の比率の高い労働集約的な業種、下請け的業務で請負額が抑えられていて低人件費が必須の業種(公的受託業務含む)、成長性が低く競争性の高い不況型、低成長型業種などではあまり展望がありません。
 私自身もここ10年間大学の非常勤講師をしてきました。年間契約方式です。毎年12月に来年の依頼があります。昨年12月10年間続いてきた依頼がありませんでした。そして今年の3月いっぱいで仕事は終わりになりました。雇用契約でもないため契約がないという連絡もありません。

 専任の正職員の教員との賃金との差はまったく比較になりません。教えるという仕事自体はたいして変わらず研究性の保障はまったくありません。非常勤講師だけの部屋があり行った時に準備をしますが、語学関係の科目はほとんど非常勤講師です。多くの人が複数の大学を掛け持ちしています。食べていけないからです。非常勤講師の労働組合のチラシも入りますが、チラシを見ると大学だけでなく予備校、学習塾の講師も入った組合らしくどこも時間給、コマ代など方式で、委託契約・年間契約の請負方式か非正規雇用の契約社員方式です。いずれも正規職員に比べて賞与はなく、長期の雇用の保障もありません。大学の専門性の高い科目や特殊な科目だと他の大学でも講座があるとは限りません。やりたい分野をやるわけにもいきません。 
 私の行っていた私立大学でも少子化による学生数の逓減による大学経営の厳しさから職員の非正規化が進んでいますがたまに正規化された職員もおり、同じ仕事で年収が大幅にアップになったという話も聞いたことがあります。差は大きいのではないでしょうか。

 つまり業種的もしくは職種的に、非正規雇用のキャリアができてしまってからでも正社員化可能なものにはどのようなものがあるか研究する必要があります。多くの業種、職種では厳しいのが現状ですから。

A 私
 比較的長期の非正規雇用のキャリアができてからの正社員化ですが、いくつかの方向があります。
 第1には、人手不足業界です。
 やはり介護業界があると思います。3K業種ですから人気がありません。しかしよく考えてみると覚悟を決めればキャリアアップも可能だし資格も取れる業界職種です。対象分野は施設が良いでしょう。施設であればぢ無資格からでも勤可能です。まずパートからでも働いてみてできるかどうか体験してみる方法があります。施設ならホームヘルパーと違い先輩同僚の指導が受けられサポートもあり未経験からでもできます。身体介護も男性でもできるでしょう。
 施設には、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、グループホーム(軽度認知症対応施設)、デイサービスなどで求人が常時あります。中高年でも可能です。ハローワーク以外に都道府県別に公的福祉人材バンクがあり福祉分野の専門求人Webサイトもあります。
 介護業界介護職の問題点としては、賃金が安い、労働時間が長い、仕事がきたないという3Kです。
 反面良い点は、この仕事が人の役に立つ仕事だということです。やる意義のある仕事です。多くの人が困っている問題を助ける仕事です。やりがいさえ感ずることができるならば十分検討してよいのではないでしょうか。
 また魅力としては資格取得によるキャリアアップがあります。無資格からスタートでき、次には介護職員初任者研修という以前のホームヘルパー2級相当の資格をとります。その後実務経験と研修受講を経て国家資格の介護福祉士の国家試験受験資格が得られます。そして国家試験受験合格で資格取得ができます。受験資格取得の要件に指定の研修受講が以前よりは加わりハードルは高くなりました。国家試験自体の難易度は高くはありません。
 介護福祉士資格を取得すれば組織の中の管理職やサービス提供の責任者になることができ、管理職手当などが付き給料はアップしていきます。転職も可能になりより給与の高い施設への異動も可能でしょう。
                                                       (続く)
                                     
     キャリアコンサルタント 上田信一郎

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